廃屋

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 ラブラブな両親の下に産まれると、たまに寂しくなる。ふたりが娘の存在を忘れたように感じるのだ。そんな幼少期の複雑な心境を一番先に見つけてくれたのは嶺ちゃんだった。『あれ、いい加減にしてほしいよな』と笑って、私の遊び相手になってくれて。  物心ついた時から、嶺ちゃんにべったりだった。いや、首ったけ?  いつも自信たっぷりで迷いがなくて、野性味のある笑顔がカッコいい。  いつも朗らかで優しい父親とは違う雰囲気に、魅了されたのは言うまでもない。嶺ちゃん以上に素敵だと思える男の子なんて、クラスの中にいなかった。  もちろん、初めての淡い恋は気付くと同時に弾けちゃったけれど。  今も顔を見るだけでドキドキする。会えると知っただけで、胸が高鳴る。  そんな乙女心を察してくれると期待したのに。  いまだに父に恋する母のくせに、浮かべる表情はやや呆れ顔だ。 「おまえ……今さらだが、あんなヤツのどこがいいんだ?」 「なッ」 「金もなければ力もない。出世の見込みもないくせに、口ばかり達者で、ひねくれ度も斜め上をいくし……いつも面倒がってる暇なヤツだぞ。一緒にいたら、苦労すること確実だ」 「そ、そんなこと言わないでよ。嶺ちゃん、すっごく素敵じゃない」 「いかんいかん。その前に、嶺也は私と同い年だ。既婚者だ。妻子持ちだ」 「わ、わかってるわよ。幼い日の他愛ない初恋ってヤツじゃない」  そこを攻められるとツライ。  実際に、彼の人格がどうとかの前に年齢差もあるし、美人で優しい奥さんもいるし。子供だっているし、そんな彼らも立派な高校生だ。  だから、私の初恋なんて気付いたと同時に失恋決定なわけで。  普通なら、のたうち回るであろう恥辱の思い出になったはず。そうならなかったのは、嶺ちゃんのおかげだ。彼は、いつも当たり前のように「俺も好きだぞ」と言って、真正面から受け止めてくれた。  たったそれだけのことなのに、本来あったはずの悲しみや悔恨、未練さえも淡雪のように溶けてしまう。  報われることはなかったけれど、私の初恋は今も美しく輝いている(現在、進行形で)。

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