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俺には時間を巻き戻す力があるんや。
代々引き継がれてきた力や。
羨ましがるヤツもおるやろう。
わかる。わかるで。
こない力持ってればヒーローになれる。
ヒーロー街道まっしぐらや。
そやけどな、でっかい力にはでっかい代償がつきものやねん。
軽はずみに使うもんやない。
「おっはよう」
教室のドアを勢いよく開け、アツが入ってきた。
「おは……っ!?」
俺は固まった。
その場にいた全員が言葉を無くし、凍りついた。
「なに? フリーズ?」
アツは小首を傾げた。
まるで女子高生のように。
「な、なんやねんその格好!」
「やっぱり一番に突っ込んだ。さすが、えせ関西人」
「誰がえせ関西人やねん! 俺には――」
「16分の1関西人の血がながれとるんや、でしょ。エセカンそれ、耳たこ~」
「えせ関西人、略してエセカンみたいな言い方するなや! 榎瀬勘人、略してエセカンや! それにな16分の1ちゃう8分の1や! いやまて、まてまてまて。今ツッコミどころはそこと違う!」
「なんで女子の制服着とるんや! 女子の制服ゆーとゴヘーがあるな。この学校に女子 の制服はあらへんから。そりゃ当たり前や、男子校なんやから。なんで女子の制服着とるんやじゃなく、なんでえせ女子の制服――」
「僕、女の子になる!」
「話を遮って衝撃カミングアウトをかますな! ……あれか、あれが原因なんやな?」
ずっと悩んでたんや。力を使うべきやないかって。
ことの発端は文化祭や。文化祭は男子校一世一代の大イベントや。
合法的に女子を呼び込めるまさに夢の祭典。
野郎どものパラダイスのはずやった。
「彼女に振られたことは気にしてない」
唯一、彼女がいるこいつはヒーローだった。
文化祭ん時も彼女が友達よーさん連れてきてくれたんや。
ほんで俺にも初の彼女つーもんがてきたんや! 花奈ちゃん。もーえらいかわいいんや!
アツは俺たちの救世主やった。
彼女からあの衝撃的な一言を喰らうまでは。
「初めての彼女がメイド服姿の僕を見て『アッちゃんやっぱり、女の子になりたかったのね!』ってキレたことなんか気にしてない!」
「気にしてるやないかい!」
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