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プロローグ
暗い。
もう暗いのに、明かりが灯っていない。
ふと、振り返る。
何かの気配を感じてか、なぜだかはわからない。
そこには、長い髪の人形があった。
闇に包まれていくように、ぼんやりと見える。
その眼は赤い。
それだけはなぜかはっきりと見えた。
それが、ぱちりと瞬いた。
逃げたいのに、逃げられない。
体は脳からの信号を一切受け付けないようだ。
近づいてくる。
音もなく。
近づいてくるその手には、包丁が握られていた。
その包丁をどうするつもりだろう。
包丁を持つ人形の腕が一瞬にして振りあがった。
けたたましい目覚まし時計の音で目が覚めた。
まだ、春なのに、珍しく汗を掻いていた。
あんな夢を見るのは、決まっている。
彼女だ。
得体の知れない彼女。
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