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「やあ、何してるんだい。こんなところで」
ばれないように来たはずなのに、ぼくが屋上に来て下を眺めていると、屋上のドアを開けて、夕くんが来た。
来たというより、ぼくを追いかけてきたみたいに、僕が到着してすぐにやって来て、ぼくの横に立つ。
正直、今夕くんには会いたくなかった。だって、二人でいると彼女はしゃべれなくなるから。
だけど唯一の友達である夕くんに、今日は帰ってほしいなんて言えない。それで嫌われたらと思うと怖い。一人になってしまう。それだけはたえられそうにない。
それに、なんだかちょっと雰囲気が違う。なんだか、何か心配事があるような。そんな彼を突き放すことは、僕には出来ない。
きっと、五時まで残っている事はないだろうから、それまで楽しくお話でもしていよう。
「夕くんは、何しているの?」
「僕かい? 君に会いに来たんだ。こそこそと屋上に向かう君が気になってね」
「そうなんだ」
どうやら、本当にぼくを見つけて追いかけて来たらしい。心配ごとの種は、ぼくだったみたいだ。友達に心配をかけ過ぎかな、ぼく。それとも、夕くんが心配性なのかな。
「ふふふ」
「どうしたんだい?」
つい笑ってしまった。急に笑って気味悪がられたかなと一瞬不安になったけれど、夕くんは笑って、僕に訊いてきただけだった。それでまた安心してしまって、また笑ってしまう。
不思議そうに、だけど僕が喋るまで待ってくれる夕くんは、本当に優しい人だと思う。
「ううん。心配されるのって、嬉しいね」
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