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 そんな優しい人になら、思っている事を言っても、恥ずかしくはないみたいだ。何も考えずに言ったけれど、言えたことが嬉しくて、また笑ってしまう。 「そうかい? なら僕はいつでも君を心配するよ」  踊る様にくるくる回って距離を取り、大袈裟に腕を広げて、舞台の上の役者さんみたいに宣言してくる。これはちょっと恥ずかしい。 「それは嫌だなあ」 「ははは。酷いな君は。自分で言ったくせに」  そうは言っても、夕君はとても楽しそうだ。夕君が楽しいとぼくも楽しい。逆に、夕君が暗い顔をしていたら、僕も苦しい。  だから、夕くんが何か悩んでいるなら、心配したい。 「僕だって、夕くんの心配がしたいよ」  お節介かと思ったけど、それでも、真剣に思いを伝えた。夕くんは、答えてくれるだろうか。 「……そう。優しいね、直は」  そう言って笑うだけで、答えてはくれなかった。やっぱり、ぼくでは頼りないんだろうな。  思っている事が顔に出いたらしくて、「そんな顔しないで」と夕くんに慰められてしまった。  ぼくの横に戻ってきて、しゃがみこんで僕を下からのぞきこむような姿勢で笑う。 「別に、君が頼りないというわけじゃないよ。頼りしているから、何も言わずに傍にいてほしいんだ」  そう言って握ってくれた手は、暖かかった。 「……分かった。へへへ」  嬉しいけどこそばゆい。だから、とりあえず笑って、僕も夕くんと目線を同じにして、同じ世界を見た。錆びついた背の高いフェンスを背にして、上を見上げると、青空に雲ひとつ。太陽はもう少しで沈みだしそうだ。  二人で夕焼けを見るのも、良いかもしれない。
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