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「あの、あのね。わたし、気になったら知らないと気がすまないの。気がすまないっていうか、分からないままでいると気持ち悪いの。だから皆に訊いてみたんだけど何も教えてくれないし関わらない方が良いって言うしでもそれだとわたしがどうにかなっちゃうから、あ、別に本当にどうにかっちゃうわけでもないんだけど、その、やっぱり気になっちゃって、だから、本人に、浅井君に訊こうって思ったの。こんなこと訊いていいか分からないんだけどでもわたしもう我慢できないの」  すごく早口で、何を言っているのか少ししか分からなかったけれど、ぼくに訊きたいことがあるっていうのだけはなんとなく分かった。  それにしても、ぼくの目の前にいるのは本当にあの真島芽衣なのだろうか。確かにおどおどしているし、声も見た目も彼女以外あり得ないのだけれど、いつもと違う。  なんだか、どうしてか、怖い。  何が怖いのか分からないけど、今すぐ逃げださなければいけない気がして仕方がない。だけど、逃げだしてはいけない気もして、その気持ちの方が強くて、動けない。 「あのね」  そして、ぼくがこのまま、夕くんと二人だけで楽しく過ごしたいと思っていたのなら、逃げ出すべきだったんだ。何があろうと。  彼女が下を向いて目を力いっぱい塞ぎながら早口言葉を言っている時に、全力で、逃げ出すべきだったんだ。  それをしなかったのは、何故なのだろうか。  分からない。けれど、結果として、僕は聞いてしまったんだ。 「い、いつも、誰と話しているの?」  それは、訳の分からない質問だった。彼女が外国語を話しているのかと思ってしまうくらい、理解できなかった。  誰とって、言った? え、っと、どういうこと? 何言ってんの? 誰とって、なんだよ。そんなの、そんなの。 「そんなの、夕くんに決まっているじゃないか」 「夕くん?」  不思議そうに瞬きをする。 「そうだよ。ここにいるじゃないか。夕くんも何か言ってよ」 「そこには誰も、この屋上にはわたしたち以外いないよ」 「そんなわけ、そんな」
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