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教室の戸を開けたら、そこには、いつもの風景が広がってる。
変わることなんかない、変わり映えのしない教室が。
何個かの集団になっている男子女子。みんな楽しそうに笑って、昨日のテレビの話とか、宿題の話とか、ゲームの話とか、まるで競っているように騒いでる。
騒がしいのに、僕の周りだけ静かだ。見えない壁があるみたいに。
それは、しかたないんだ。
だって、ぼくはいじめられているから。
浅井直太朗という名前をもらって十一年。いじめられること五年。人生の約半分はいじめられていることになる。
何が原因かはぼくにも分からない。これと言って特別な事をした覚えはないし、目立った特徴もこれといってない。いたって普通の家に生まれた、いたって普通の背格好の人間のはずなのだけど。
確か始まりは、一年生の二学期からだったと思う。夏休みが開けてから、友達が離れて行ったのを覚えている。
夏休みを全て使って両親が離婚騒ぎを起こしていて、嫌で嫌で仕方がなかったから、せっかくの休みだっていうのにほとんど部屋から出ないでいて、やっと始まった学校。家にいなくていいことですこしほっとしたのに、徐々に友達は離れていったんだっけ。
暴力だったり嫌がらせだったりをされていないだけましだけれど、
それでも、当時の荒んだ心境のぼくには厳しかった。どうしたらいいのか、わからなかった。
いじめの方法は、今も昔も無視だ。というか、関わろうとしてこない。話しかければ、返ってくることもあるので、正確には無視ではないのかもしれないけれど、ぼくを避けているのは本当。ぼくの感違いなんかじゃない。みんながみんな、ぼくを気味の悪いものを見るような目で見てくるんだ。先生だって例外じゃない。クラスメイト程露骨じゃないにしても、ぼくとそれ以外の人への対応の仕方が、明らかに違う。
クラスメイト達には避けられ、先生も頼りにならない状況。唯一の救いは、両親が別れずに仲を直してくれた事ぐらい。離婚までされていたら、ぼくは今頃おかしくなってしまっていたかもしれない。
それでも、学校に友達がいないわけではない。
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