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唯一の友達、唯一話しかけてくれて、ぼくと一緒にいてくれる友人。天馬夕君。一年生からずっと同じクラスの男の子。髪の毛がいつもぼさぼさで、ぼくよりも、他の子よりも少し背の高い、ぼくの親友。彼がいなければ、ぼくは学校になんて行ってない。ぼくの心の支え。友達なんて、彼さえいればそれでいい。
昔は彼には結構たくさん友達がいたように思うのだけど、今の彼は、ぼく意外と会話している姿をあまり見ない。もしかしたら、彼もいじめられているのかもしれない。あんなに明るいのに。
それはたぶんぼくのせいで、ぼくなんかと一緒にいるから、彼はぼくと同じように、他の人達に避けられてしまっている。それはとても心苦しいんだけど、だからって、ぼくに関わらない方がいいよなんてこと言えない。僕は彼がいなくなったら、もう生きていけないんだ。いつかちゃんと、お礼を言わないといけない。お礼と、それと、ごめんなさいを。
そういえば、夕君の他にもう一人だけ、一年生の時から一応話しかけてくれるクラスメイトがいる。
名前を真島芽衣とか言ったかな。やたらとぼくの事を心配してくる。正直うざったい。ほっといてほしい。同情で話しかけられても嬉しくない。
クラス委員か何かなのだろうか、それでぼくを放っておけないのかもしれない。いい迷惑だ。そのくせ目を合わせただけでおどおどして、何か言いかけて黙ることだってある。そんなに怯えるんだったら、関わらないでくれていい。五年も避けされているんだ、中途半端な気持ちなんかいらないんだよ。
本当、何なんだろう。
彼女とはあまり関わりたくないし、一週間に一回くらいは、どうしても行きたくないなって思う日が今でもある。
それでも学校には行かなければいけない。両親に心配はかけたくないし、ぼくのことが原因になって、また喧嘩が始まったらと思うと嫌だから。
だから、ぼくは両親に笑って「いってきます」を言うんだ。
「いってらっしゃい」を背中に浴びて、学校へと歩き出したいから。
夕くんに会うために、学校へ向かう。
それだけで、ぼくは満足だった。生きていられる。
なのに、その唯一の楽しみも、僕は失うことになる。
その原因はやっぱり彼女、真島芽衣なのだった。
ぼくは何もかも、失った。
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