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 体育の授業は楽でいい。何せ、体の調子が悪いと言えば、見学が出来る。授業だと、保健室に行かされて、保健室の先生に診断されて元気だと思われたら、また戻されてしまう。だから、僕は体育の時間しか、この手を使わない。  そんなに頻繁には言わないけれど、他のクラスメイト達に比べればかなり多いと思う。二、三回に一度は休む。  普通なら怒られそうだけど、先生もぼくが休んだ方がやりやすいと思っているんだと思う。簡単に見学出来るから。クラスメイト達だって、僕と一緒に授業を受けなくてすんで、ほっとしていることだろう。何かでペアになった時の、どうしようって顔は、あまり見たくない。  今日は、昨日雨が降って地面がぬかるんでいる校庭で、サッカーをするみたいだ。女子と男子で別れてそれぞれミニゲームをやっている。楽しそうに。  こんな状態の校庭じゃ、何にしろ、サッカーなんてやりたくないけれど。  ボールを追いかけるクラスメイトを見ていた視線を、地面に落とす。ちょうどいい石ころがあったから、軽く蹴ってみた。真っ直ぐは転がらないで、右に曲がっていった。  近くにあったタイヤが半分地面に埋まっている、跳び箱みたいに使う遊具に座って、足を少し浮かしてばたばたと動かす。その足を意味もなく見つめる。 「羨ましいかい?」  そんな僕に突然声をかけてくれるのは、一人しかいない。 「夕くん」  顔を上げると、そこにはいつものぼさぼさ髪の男の子がいた。  夕くんは、ぼくがこうして体育を見学しているとたまに、一緒になって見学してくれる。夕くんまで休むことないのにと言うと、夕くんは決まって、ぼくはアウトローだからと言って笑うのだ。 「隣いい?」とぼくに訊いてきたから、僕は頷いた。  タイヤの遊具に座った夕くんを見ずに、サッカーをするクラスメイトに視線を注ぎながら、さっきの質問に応える。 「そりゃあ、僕だって体を動かすのは嫌いじゃないからね」  何だか少し駄々をこねているようになってしまって恥ずかしい。夕くんはそんなぼくを笑った。余計恥ずかしかった。 「なら混ぜればいいじゃないか」  夕くんは気軽にそう言う。いや、気軽にってわけでもないのかな。気づかってくれているんだ。  なのに、ぼくは、拗ねてしまう。 「出来るならそうしてるよ。でも、ぼくは」
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