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「あのね!」
突然、顔を真っ赤にして大きな声を出して、真島が一歩近づいてきた。驚いて体を少し仰け反らしてしまう。
どうやらやっと勇気が出たらしい。何が言いたいのだろう。
「きょきょ今日学校放課後その後にそのあのえとえと――」
「おおい、直。おっと、取り込み中だったかい?」
そんな時、真島にはタイミングが悪いことに、夕くんが戻ってきた。
「あ、ああのあの」
真島はパニックになったまま言葉をどうにか出そうとしている。僕は今度こそ溜息を吐いた。
「ちょっと待ってね夕くん」
やっと言おうとしてくれたので、彼女の言葉を先に聞きたかった。いい加減このわけのわからない状態を解消させたい。だけど、やっぱりダメみたいだ。完全に下を向いてしまい、ぼそぼそと何かを呟いて、「明日までです」と落ち込んだように机の上のプリントを指さして、友達なのだろう集団の元へと戻ってしまった。
「あーあ」
「終わった? やっぱり、邪魔だった?」
「そんなこと、ないよ」
「なら、いいんだけど」
そういうと、夕くんはぼくの机に座って、さっきの話の続きをし始める。
夕くんと話すのは楽しいけれど、その時ばかりは、さっきの、真島が何を話そうとしたのかが気になってしまって、上の空だった。
今日、学校、放課後。どういうことだろう。さっぱり分からない。
なんとなく気になってしまい、話の途中で何回か真島を盗み見してしまった。そこで初めて気がついたんだけど、どうやらあいつも別に、クラスに馴染めているわけではないみたいだ。輪の中に入っているようで、まるで孤立している。ただ合わせて頷いているだけだ。辛くないのかな。僕には無理だ。ああまでして、誰かと関わっていようとは思えない。
もしかしたら、真島も僕らの仲間に入れてほしい、とか。まさかね。
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