第4話

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 ふと視線の先に、  パン屋で貰ってきた袋が目に入る。  売れ残りのパンを奥さんに貰ったもの。  するとお腹が、クゥ~と鳴る。 「お腹空いたね、ご飯にしようか」  時刻は夜7時20分。  起き上がりパンの袋を手に、  自分のお腹に向かいそう言うと、  またお腹が、クゥ~と鳴ったから、  思わず笑う。  私の赤ちゃんは、  パンが好きなのかもしれない。  気持ちを切り替えて、  キッチンに行き食事の支度をする。  乾燥ワカメをお湯で戻し、  水を切ってツナ缶と混ぜ合わせ、  刻んだネギを入れる。  これで1品。  冷蔵庫からほうれん草を取り出し、  軽く茹でて水を切り、  しらすを混ぜてから、  かつお節を上に乗せる。  これで1品。  即席みそ汁をお湯で溶かし、  刻んだネギを放つ。  そしてもらったメロンパン、  コロッケパンを、  ガラステーブルの上に並べる。  以上が今夜のメニューだ。 「いただきます」  私とお腹の子との2人の食事。    妊娠している今は、  栄養を考えた2人分の食事を、  毎日しっかり摂る必要性がある。  モグモグと食べながら、  我が子に自慢げに語りかける。 「コロッケパン美味しいね、これはお母さんが作ったパンだよ」  ただし母は補助的作業のみだが。  一から作る手作りパンの味は別格。  しっとりモチモチ生地で、  とても美味しい。  ホームベーカリーでは、  この味は出せない。  またお腹が、クゥ~と鳴った。  赤ちゃんも美味しいと言ってるらしい。  よほどパンが好きなのだろうか?  どちらに似たのだろう、  尚人はパン好きだったろうか・・・。  自分の左手の薬指に嵌めたままの、  おもちゃの指輪をちらり見て、  しばし贈り主を想う。 「よし、明日の帰りにパンが貰えなかったら辞めることにしよう。うん、そうしよう」
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