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ふと視線の先に、
パン屋で貰ってきた袋が目に入る。
売れ残りのパンを奥さんに貰ったもの。
するとお腹が、クゥ~と鳴る。
「お腹空いたね、ご飯にしようか」
時刻は夜7時20分。
起き上がりパンの袋を手に、
自分のお腹に向かいそう言うと、
またお腹が、クゥ~と鳴ったから、
思わず笑う。
私の赤ちゃんは、
パンが好きなのかもしれない。
気持ちを切り替えて、
キッチンに行き食事の支度をする。
乾燥ワカメをお湯で戻し、
水を切ってツナ缶と混ぜ合わせ、
刻んだネギを入れる。
これで1品。
冷蔵庫からほうれん草を取り出し、
軽く茹でて水を切り、
しらすを混ぜてから、
かつお節を上に乗せる。
これで1品。
即席みそ汁をお湯で溶かし、
刻んだネギを放つ。
そしてもらったメロンパン、
コロッケパンを、
ガラステーブルの上に並べる。
以上が今夜のメニューだ。
「いただきます」
私とお腹の子との2人の食事。
妊娠している今は、
栄養を考えた2人分の食事を、
毎日しっかり摂る必要性がある。
モグモグと食べながら、
我が子に自慢げに語りかける。
「コロッケパン美味しいね、これはお母さんが作ったパンだよ」
ただし母は補助的作業のみだが。
一から作る手作りパンの味は別格。
しっとりモチモチ生地で、
とても美味しい。
ホームベーカリーでは、
この味は出せない。
またお腹が、クゥ~と鳴った。
赤ちゃんも美味しいと言ってるらしい。
よほどパンが好きなのだろうか?
どちらに似たのだろう、
尚人はパン好きだったろうか・・・。
自分の左手の薬指に嵌めたままの、
おもちゃの指輪をちらり見て、
しばし贈り主を想う。
「よし、明日の帰りにパンが貰えなかったら辞めることにしよう。うん、そうしよう」
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