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勝手に自分の中でそう決めて宣言。
でも結局毎日パンの売れ残りを貰えて、
店主のおじさんと奥さんの人柄も良く、
辞めるに辞めれなくなってしまい、
2週間が経ったある日。
いつものように出来たてのパンを、
店の棚に陳列していた時、
「・・・かお、りん?」
唐突に寄越されたその声に。
振り向くと、
見覚えのある元同僚、
スーツ姿の伊東君。
目を大きく見開いて、
かおりんと呟きながら、
こちらに近づいてくる。
「かおりん、かおりん、かおりんだ、本当にかおりんだ、かおりんかおりん~~」
「こんにちは伊東君、久しぶりだね」
「会社に出入りしてる業者の人が、ココでかおりんに似た人を見たって聞いて来たんだ。そしたら本当にかおりんいたからぁあああ」
そう言った後、
次にはボロボロと泣き出す。
レジにいた奥さんが驚いて見てる。
「かおりん急に会社辞めたから、会社の誰に訊いても理由知らないって言うしぃいい」
「うんうん、ごめんね黙って辞めて。ほら鼻水出てる」
「会いたかったよお、かおりんに凄く会いたかったよぉおおお」
「わかったわかった」
着ていたエプロンのポケットから、
ポケットティッシュを出して、
鼻水流して泣いてる相手に渡す。
やれやれの元同僚だ。
他にお客さんもいない今、
店内で堂々と鼻をかんでいる人物に、
話しかける。
「会社の皆は元気?変わりない?」
「皆元気だよぉ、変わりなく働いてるよぉお」
「部長・・・は元気?」
「佐久間部長は社長の娘と結婚したよぉ、でも結婚破談したって聞いたよぉおお」
・・・どっちなんだ。
久しぶりの元同僚との再会。
会話もしたいけれど、
でも今は仕事中。
「伊東君ごめんね、ゆっくり話したいけど、私今仕事中だから」
「うん。かおりん、僕パン買うよ。全部」
鼻をかみ終えた元同僚が、
顔を上げて突然言い放つ。
「え?全部、ってここに置いてあるの全部?」
「うん。かおりん作ったパン全部買う」
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