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疎らに通り過ぎる車とは違う大きなエンジン音が遠くから聞こえてきた。
「あ、バスが来た…」
そう呟いたものの、立ち上がる事が出来ない。
私がいなくなったら、この猫 どうなるんだろう。
「帰る家、あるの?ちゃんと帰れる?」
話し掛けても返事をする訳ではないけれど、気になって仕方ない。
その時だった。
いきなり高校生くらいの男の子が乗った自転車が、私達目掛けて突っ込んできた。
暗かったし、感傷に浸っていたし、その気配も今の今まで全く気がつかなかった。
「うわ!ギャー!」
「フミギャーー!!」
咄嗟にかわしたものの、元々ヤンキー座りだった私は、見事に尻餅をついてしまった。
男の子はこちらをチラ見しただけで脱兎の如く走り去る。
道路交通法が変わったんだよ!
自転車も立派な凶器なんだよ!
あっという間に闇に消えた青年に、心の中で腹立たしさをぶつけるしかない。
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