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スマホは水没を免れたようで、無事に起動した。
…本当は頼りたくないけれど、緊急事態だ。
この姿でタクシーを呼ぶのも情けないし、お金もかかる。
溜息をつきながら、検索した番号をタップする。
あっという間に繋がったそれから、けたたましい声が響いた。
『志織!ちょっと元気~?久しぶりじゃん!アタシはめちゃくちゃ元気よ~ 何、何?寂しくなった?アタシの声、聞きたくなったとかぁ?』
私はまだ一言も喋っていない。
『こんな時間にどうした?今、外?あ、残業してたのか!どうよ、これから ご飯食べに行く?』
繰り返すが、私はまだ一言も喋っていない。
『今日、たまたまお店が早く終わってさー!アタシも今帰って来たとこ!すんごい美味しいイタリアンのお店知ってるから、今から迎えに』
「お兄ちゃん」
やっと口を挟む事が出来た。
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