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「支店長は、全てご存知です」
惨めさと 自分でもよくわからない感情とが入り混じり、頭に血が昇りかけた私を宥めるように 横山は冷静だった。
「貴女もさっき話してくれたでしょう?明らかにおかしい書類を支店長に回しても、決済されて戻ってくると」
「…」
「今回の曽根崎の件を知っているのは、本社の経理部長と貴女の支店の支店長と僕だけです。奴の書類も、不明瞭なのを十分承知して見て見ぬ振りをしてもらいました」
豪快で大雑把な支店長が…
「支店長はああ見えて、実に細部まで目の行き届く方です。殆ど毎日、曽根崎と…貴女の様子を報告してくださいました。それに」
横山は私に向き直ると、きっぱりと言った。
「僕は貴女を守る、と決めていましたから」
上昇中だった血圧の速度が、いきなり緩んだ気がする。
私から目を逸らさない横山と、無言で見つめ合った。
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