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「お二人とも、難しい顔をして。いかがですか?もう一杯」
いつの間にか岩元さんが戻っていた。
険悪な雰囲気が漂っていたのかもしれない。
和かな顔で私達を交互に見る。
とにかく 司くんの事は話したし、本社で起こった事件も聞いた。
全て横山が把握しているのなら、私が司くんにどう対処したら良いか 明日から的確な指示をくれるだろう。
…私がこれ以上、ここにいる必要はない。
「私、帰ります。お疲れ様でした」
立ち上がり、鞄から財布を出そうとした。
「岩元さん、僕もこれで失礼します」
隣の横山も慌てたように立ち上がる。
「…あの、係長は」
別に帰らなくても良いのに。
岩元さんと知り合いなら、もっとゆっくりすればいい。
「送りますよ。財布はしまってください」
「でも…」
「あ、岩元さん、また来ますので」
横山らしくないスマートではない動きに、岩元さんが吹き出した。
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