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勢いでピシャリと撥ね付けた後、しまった、と思った。
横山が…溜息をついて天井を仰ぐ。
所在無げにスラックスのポケットに手を突っ込み、何か考えているようだ。
お、怒った…?
いつものように、冷凍人間と化して何か嫌味を言われるんだろうか。
「…お嬢さん、送ってもらうくらい良いでしょう?男はね、大切な女性を夜に一人で帰すなんて出来ないんですよ」
岩元さんが私達のグラスを片付けながら、穏やかに話し掛けてくる。
また出た〝大切な女性〟。
司くんに何度も言われ…
『信じられへんけどな。酔った女の子をほって帰るなんて』
三郎…
『そこまでお前を大事に想ってるなら、心配で堪らないだろ。夜に一人で帰すなんて信じられん』
お兄ちゃん…
司くんは〝大切な〟私を送ってくれなかった。
横山は…
信じてもいいの?
囮なんかじゃなくて、司くんの不正を咎める為に私を〝選んで〟くれたって…
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