信じても、いいですか!

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車窓から過ぎ行く夜の街並みを眺めている振りをして、心ここにあらずだ。 ーー『僕の〝送る〟というのは、貴女が自宅に無事に入るのを見届けるまでです』 横山って、律儀な人間なんだ。 …横山の彼女は、こんな風に〝大切〟に扱ってもらっているのか… 妙な考えが浮かんで、私には関係ないし、と思い直す。 何か喋るべきなのか、横山が義務感で仕方なくこうしているのなら 静かにしておいた方が身の為なのか。 喋るとしても 内容が内容だけに司くんの話は今さら厳禁な気がするし、社会情勢とか政治の話とか私が興味の無い話はボロが出て気まずくなっても… 「猫は」 「はいっ?」 「支店のあの三毛猫は、どうしてますか?」 以前に会社に電話してきた時も、三郎を気に掛けていた。 この人、本当に猫が好きなんだ。 「元気にしてます。アドバイスもいろいろと」 「アドバイス?」 いかん、口が滑った。
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