578人が本棚に入れています
本棚に追加
崩れた私の膝辺りに、猫がいた。
街灯が薄暗くて、全然気がつかなかった。
猫も全身びしょ濡れだ。
「ニャー」
私と30センチくらい距離を置いて〝お座り〟して私を見ている。
「あんたも酷いね」
そっと手を伸ばすと、身体をすり寄せてきた。
子猫ではない。
でも、そんなに大猫でもない。
思わずバッグからハンカチを出して、猫の身体を拭いた。
吸水性、悪っ。
「タオルだったら良かったね、ごめんよ」
このハンカチ、捨ててもいいや。
全く逃げる様子のない猫の身体を 屈んだ姿勢で思い切り拭いた。
「ミギャ」
「あ、ごめん。痛かった?つい力が」
「ギャオゥ」
優しく拭けよ、みたいに私を睨む。
「冬じゃなくて良かったよね。風邪引くよ、お互い」
「フミー」
最初のコメントを投稿しよう!