二重人格

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戦争へ行った兄が帰ってきた。 家族は喜んだ。 けれど、まわりの家の住人からは冷たい視線を浴び続けた。 兄には恋人がいた。 見た目も心も綺麗な人で、精悍で心優しい兄とは、とてもよくお似合いだった。 兄が帰ってきて9年後。 その彼女が空爆による炎に巻かれて死したことを知らされた。 死体は美しかった面影もなく、骨が一部剥き出しになったような見るに耐えないものであった。左手の薬指の煤けた指輪が身元の照明品であった。 周囲からの冷たい目と、彼女の死。 無理をして毎日を笑っていた兄は、とうとう倒れた。 記憶を失った兄。 その記憶が戻るのは、夜の間のみだった。
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