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「疲れるんだよねぇ。やりたくもない勉強を部活終わりにやらされるとさぁ」
「好き勝手に喋ってただけだろうが、作倉は」
「あ、そう言うこと言っちゃう? 最近は、勉強だけじゃなく生徒のカウンセリングも教師の仕事なんじゃないの」
「勝手に教師の仕事を増やすな。と言うか、なんだ。カウンセリングされたいようなことでもあるのか、おまえは」
俺で解決できる範囲なら聞いてやらないといけないとは思うけれども、だ。突かないで済む藪なら突きたくはない。
「先生」
変わった声のトーンに、諦め半分で話を聞く体制をとる。相談する相手を間違っているとは思うが。
監督だとか、コーチだとか。そもそも論で言えば、チームメイトだとか同級生だとかにすれば良いのに、とも思いながら。
「俺、数学は出来るんだよね。壊滅的なのは古典と英語。どっちも長文を読む気が起こらなくて」
「それは分からないんじゃなくて、やる気がないだけじゃねぇか」
真面目な顔を一転させて人を食った笑みを浮かべた作倉に、頭を抱えたくなった。
と言うか、その理論で行くなら、全教科赤点すれすれと言う漫画みたいな事態を引き起こすなと心底思う。それでさえなければ、俺にお鉢が回ってくることもなかったし、――余計な話を聞くこともなかったのに。
「明日はそのどっちかでよろしく」
言いたいことだけ言って立ち去った長身を見送って、俺は隠さない溜息を吐いた。つまるところ、勉強をみる以前に、やる気を出させることが肝心なわけで。あと何回通わなければならないのかと考えると気が重いが、手を出してしまったものは仕方がない。
へぇ、佐野先生が。と話を通した際に寮監にも不思議がられたが、俺だって謎だ。好き好んでやりたかったわけでも、この寮内に入りたかったわけでもない。
明日やる気があるだけマシか、と思うことにして食堂を出ると、階段から降りてきた時枝と目が合った。
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