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「えー、佐野、付き合い悪い! いいじゃん、明日休みなんだし」
「悪い。明日、朝から用事あるんだよ」
別にそんな用事は、なかったのだけれど。今更だと分かっている。いつまで引きずるつもりだと自嘲したいのも本音だ。けれど、今、これ以上アルコールをいれたら、きっと自分はろくでもない本音をさらしてしまう。そんな気がしてしかたなかった。
「今度は絶対付き合えよ」だの「帰り道、襲われんなよ」だの好き勝手言ってくるのを、おざなりに手を振って、駅に向かってひとり歩きだす。
だから言っただろう、と思う。
あれはもう何年前の話になるんだろうと考えて、三年も前になるのだと言うことに驚いた。
それなのに、俺の中では、まだあんなに鮮明に折原が残ってしまっている。
でも、あんたがいないじゃないですかと。佐野先輩がいないのは嫌だと。何かをこらえて絞り出したような声で折原が言う。
まだ高校一年生の折原だ。
大丈夫、――大丈夫。
なぁ、大丈夫だっただろう?
おまえは今、俺がいなくても、なんの不足も感じていないだろう?
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