夢の続きの話をしよう《1》

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そんなことまで思い出してしまって、眉間に皺が寄った。駄目だ。 今日は思い返しても意味もない昔の記憶ばかりを、掘り返してしまっている。 「この間、メール回ってきてただろ? 飲み会しないかって」 「あぁ、そういや来てたな。悪い、返信忘れてた」 「それはいいんだけどな、……あのさ、おまえ、飲み会、来る気ないか?」 問いかけに、少し息が詰まった。 大学に入ってから何度か深山のメンバーから飲み会の開催メールは回ってきていた。けれど、俺はそれに一度も参加をしたことがなかった。 今も連絡を取ってる当時の仲間は富原だけだけれど、その富原にも、今まで一度も、その事実に触れられたことはなかったのに。 「おまえがそれ、言うの」 これを言うのはずるいと分かっていたけれど、気が付けばそう漏らしてしまっていた。 富川が急に言いだした理由も、本当は分からなくもない。 もう三年も前なのだと、さっき思っていたのは俺自身だ。 あのころ俺と同学年だった奴らでプロに行った奴は少ない。富原みたいに推薦で大学サッカーをしているメンバーもいるけど、すっぱり辞めた奴だって相当数存在する。 あのころみたいに、サッカーが全てでないことは、知っている。 言い淀んだ気配の後、富原が「でもな」と言葉を継いだ。 「みんな、会いたがってる。山路も磯川も―――折原も」
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