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「でもあいつも、思うところがあるんだと思うぞ。あの折原が、酒が入らなかったらおまえの話、一切しないんだ」
あれだけおまえに懐いてたのに連絡先も教えるなっておまえが言うし、とほんの少し責める響きのこもった声に、曖昧に濁すことしか出来なかった。
けれど、俺が折原と連絡を取りたくない理由を、富原は気づいていると思う。
俺の微妙に屈折したサッカーへの思いだとか、俺と折原のどうしようもないような感情の揺らぎだとかに。
「あー、でも悪い。20日の木曜だったよな。俺、その日バイト入ってるんだわ」
「……じゃあ次は、早めに日程決めるから、あけとけよ。おまえの都合で組んでやるから」
言質を要求する富原の台詞から、笑うことで逃げて明言を避ける。
流れる時間の中で変わることは当たり前だ。変化していくことを望まれるのは分かっているし、それは当たり前のことなんだとも思う。
折原は立ち止まってなんかいない。
着実に進んでいる。
富原も、他の奴らも、そうだ。
自分で選んだ岐路の先を歩んでいる。
俺だけが、いつまでもあのころに捕われたままなんだ。
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