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サッカーが、好きだった。
飛び抜けて才能があったわけではないけれど、全くなかったわけでもきっとなかった。
なけなしのそれを育てて、伸ばして、信じて、縋り続けていた。
サッカーの名門、中高一貫である深山学園に背伸びをして入学したのも、全国区でプレーをしてみたかったからだった。
そこで本物の化け物に出逢って、自分の世界の小ささを思い知ることにはなったのだけれど。
――でもそれでも、俺はサッカーが好きだった。
俺が努力して努力して、それでも手が届かない世界に、いとも簡単に立ってしまえる人間がいると知ってからも、俺はどうしようもないくらいサッカーが好きだった。
必死で踏ん張って、中学3年の夏に念願だった名門の背番号10番と、司令塔の座を手に入れた。全国大会にも出場することが叶った。
けれど、高等部にそのまま進学するかどうかは、実を言えば迷ってもいた。
中等部よりも遙かに有望な人材を集められるそこは、中等部時代一軍だったからと言って、レギュラーの座が確保されているわけではない。
でもそれでもと、思ったのは――。
【むかしみた、ゆめのはなし】
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