夢の続きの話をしよう《1》

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「っつかさ、その辺のチャラチャラしたのと一緒にしてやんなよ、折原、ちゃんとプロだよ。ファンサービスの会話はしても、手ぇ出したりするはずねぇだろ」 言い切った瞬間、庄司が訝しげな顔をしたのが分かって、「まぁ一般論だけど」と、早口で付け加える。 今は、知らない。けれど、俺が知っている高校生の折原は、そうだった。当時から折原は馬鹿みたいに人気があって、サッカー部が練習しているグラウンドのフェンスには、いつも女の子たちが張り付いていた。 でもいつだってあいつは、「なんか俺ら珍獣みたいっすね」とそう笑うだけで、ほとんど相手にもしてなかった。 他の先輩から勿体ねぇなと言われても、あっけらかんと「だって俺、サッカーしてる方がいいっすもん」と笑っていた。 「あー……、まぁ、栞にはフォローしといてやっからさ、おまえは栞が言った通りだって。頭冷やしとけよ。それで次までに謝っとけよ」 なんでこんなことばっかり思い出さなきゃいけないんだと、八つ当たりのように考えながら、栞の後を追って部室を出る。 本当に、なんで。今更になってこんなにまた、俺の周りで折原が溢れてくるんだろう。
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