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「なに」
「や、栞がさー、すげぇ折原がおまえに懐いてたっぽいこと言ってたから」
どうなんだろうと思って。含みを持った笑みを向けられて、顔をしかめる。それ以上突っ込むな、の合図だ。そして庄司は、チャラい見た目に反して、そういった引き際は心得ているタイプだ。
――まぁ、全部、今更な話ではあるんだけどな。
だがしかし、逆に言うならば、今更な話なのだから、言及したくない。
異なる話題を差し出してきた庄司に有り難く乗っかりながら、校舎を出た時だった。
「……なんか、いやに人、多いな」
「多いっつうか、はしゃいでんな、空気が」
テレビでもきてんじゃねぇと周囲を見渡す庄司に、「なんでウチにそんなもん来るんだよ」と言い返そうと見上げかけた瞬間、女子学生の三人組がはしゃぎながら校舎から飛び出してきた。
「なんか折原くん、いるらしいよ! さっきライン回ってきてた!」
「えー、誰それ?」
「うっそ、知らないの!? サッカー選手だよ、サッカー。しかも超かっこいいの!」
「え、マジで!? 見にいこ、見にいこ!」
きゃっきゃと入り口付近に立っていた俺たちを押しのけるように正門へ向かっていく後姿を、半ば呆然と見送っていた俺に、
「だってさ。原因」
と、庄司が耳打ちしてきた。
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