夢の続きの話をしよう《1》

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知らねぇよ。っつうか、知るかよ。あいつにとって俺はただの懐かしい先輩だったとしても、俺にとってはただの後輩になりきってねぇんだよ。 何年経っても未練がましい。でもそうやって分かってるから、だから、会いたくないって。会わないってそう決めてたんだよ。 無言のままでいるのに、構わず庄司は実況をやめてくれない。 「うわー女の子って集団になると半端ねぇな、こえー。でも折原くん、おまえに会うまではてこでもあそこから動かないって感じだな」 ――決めて、いたのに。 「おまえ、このまま裏から帰れよ」 「佐野はどうすんの?」 にやっと笑うのに、「回収だけしてくる」と言い捨てて、騒がしい正門へ足を向け直す。 会いたくない理由が、俺のどうしようもない未練だけなのだとしたら、今はそれを見ないふりをするしかない。 忘れたふりで、俺も折原と同じ割り切ったふりで、折原を連れて抜け出して、それで、終わりにしよう。 本当に、終わりにしよう。
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