夢の続きの話をしよう《1》

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俺が正門付近に辿り着いたときは、想像していた以上にすごい人だかりが出来上がってしまっていた。 中心できゃいきゃいと纏わりついているのは、自分に自信がありそうな女の子ばかりだったが、輪から外れたところで携帯電話を構えている学生の多さに嫌気が差した。 なぁ、そいつ、プロ選手ではあるかもしれねぇけど、芸能人でもなんでもねぇよ。ほっといてやれよ。 顔でばっかり騒いでねぇで、サッカーしてるところだけ見ててやれよ、と。 今更。それこそ今更俺が言及することではないと分かっていたのに、理性じゃ効かないところで、腹が立った。 「折原!」 その苛立ちが乗ったように、大きい声になった。 幼いころから広いフィールドで指示を出していたせいか、それとも地なのかは分からないが、俺の声はよく通ると昔から称されていた。 そしれそれは今回も中心までしっかり届いたのだろう、折原を囲んでいた女子の声が止んで、弾かれたように折原が顔を上げた。 「先……」 「俺に用事だったんだろ、早く行くぞ」 決めたはずの心は、折原の顔を見ると簡単に流されてしまいそうで、俺は不自然にならない程度に視線を外すと、そのまま門を出た。後ろを確認なんてしない。それでも俺には折原は着いて来るだろうと何故か確信していた。 我ながら矛盾していると、本当に思う。もう折原は昔とは違うんだと思っているくせして、あの頃と変わらない行動を折原が採ることを期待している。
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