夢の続きの話をしよう《2》

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【夢の続きの話をしよう:2】 大学に入るのと時期を同じくして始めた個人指導塾の講師のアルバイトは、夏休みが一番忙しい。新学期に入って、ようやく通常のリズムに戻り始めていた。 「佐野せんせー、さよーならー」 「もう暗いから気を付けて帰れよ、また来週な」 大学の講義の関係もあるから、基本的に週に三回。遅めの時間帯を担当している。必然的に受け持つ生徒の層は高校生や中学生で、年齢が近い所為もあるのだろうが、慕ってくれているさまが伺えると、やはりかわいい。 今日の最後のコマの生徒を玄関で見送って、講師用の休憩室へ、さて戻ろうかとひるがえしかけていた足が止まった。 「山藤さん?」 視線を感じた先にいたのは、高校生の女子生徒だった。俺が担当しているわけではないが、この子が通塾している時間帯と俺が出勤している時間が重なることが多いために、お互い顔と名前は一致している。 ただ、あまり積極的に話しかけてくるタイプではないと思っていた生徒だったため、俺を待っている風なのが少し意外だった。
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