夢の続きの話をしよう《2》

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「ありがとうございました」 少しきまり悪そうな笑みを浮かべた彼女を、講師用の愛想を蓄えた笑みで見送る。 硝子戸が閉まり、制服姿が自転車置き場へ消えていったのを見届けてから、隠しきれない溜息を俺は零してしまった。 ――やっぱ、送らすんじゃなかったな。 まさかこんなにタイミング良く見られるとは、予想外だったけれど。 感づかれたくはないから、と。塾から距離のある場所で降りたのが見事に災いしたらしい。 昔から目立つ奴ではあったけれど、今はもう、次元が違う。 あのころは、少なくとも勝手に写真を撮られたりしなかった。 なにかしでかしたとしても、監督に雷を落とされたら終わるものだった。 でも、今はそうじゃない。 それなのに、あいつは、なにをまた血迷ってるんだか。 ――俺は先輩のこと、そういう意味で好きでしたよ。たぶん、今も、ずっと。 そう言った折原の声が、苦しそうな眼が、勝手に頭の中で何度も何度も再生される。 今更だ、と思う。それは本当に。 もう失くしたと思っていた。終わったと思っていたし、会うことはないだろうと、そうずっと。 馬鹿じゃねぇのとは言うことはできても、俺は嫌いだとは言えなかった。 おまえなんか好きじゃないと言えなかった。 そう言うべきだと、理解していたはずなのに。 もう本当に馬鹿だと、どうしようもないとしか思えなくて――それ以外の言葉を見つけたくなくて、嫌になる。
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