夢の続きの話をしよう《2》

6/21

6627人が本棚に入れています
本棚に追加
/787ページ
今週末に日本である、国際Aマッチの観戦チケット。 スタメンはまだ不明だけれど、折原は召集されているはずだ。前回の国際試合の折、決勝弾を決めたのは折原だった。所属クラブも上位で、コンスタントに良いプレイを続けているらしい。 できるだけ見ないようにしているから、クラブでの活躍云々は、栞からの受け売りではあるのだけれど。 出場するんだろうな、と思った。 折原が一歩フィールドに踏み込むと空気が変わる。昔から折原はそういう存在だった。天性のエースストライカー。 それを俺が観客席から見るということが、悔しいわけじゃない。あのころからずっと思い知っていたことだ。俺と折原じゃ次元が違う。辿り着けるところが違う。 でも、なにを思って、あいつは俺に見に来てほしいと、見ていてほしいと言うのだろう。 単純で天真爛漫なようでいて、折原はしっかりと空気を読むし、人の感情の機微にも聡い。それは昔から突出した才能を持っていたあいつが、同世代や先輩と上手くやっていくために身につけた処世術なのかもしれないけれど。 ――よく分からない。 あのころと変わらないような笑顔で、「先輩」と、追いかけてくる折原も。 それを満更でもなく思っている、俺のプライドも。
/787ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6627人が本棚に入れています
本棚に追加