夢の続きの話をしよう《2》

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「俺は先輩に会いたかった」と。そう言ったきり黙り込んだ折原に、俺はどう応じればいいのか分からなかった。 立ち止まっている間にも、ちらちらと視線を飛ばしながら学生が通り過ぎていく。このままでいいわけがない。言い聞かせたのは俺に対してだ。もうここまで来たら、仕方がないだろう。 この後輩は俺の言うことをなんでも聞く癖に、そのくせ自分が絶対に意思を曲げないと決めたこととなれば、絶対に折れないのだ。 「場所。ちょっとは考えろよ」 おまえは目立つんだよ。深山のころとは違うんだよ。言おうかと思ったけれど、言えそうになくて、呑みこんだ。 折原は強張っていた表情を無理やり緩めて「車なんです、俺」と提案してきた。 「用事あるんだったら、そこまで、俺、送りますけど」 その声もまだ固かったけれど。掴まれたままの手に視線を落として、俺は自分自身を納得させるために、溜息を吐き出した。 ここまでくれば、ただのポーズにしかならなかった。 「時間、あんまりないからな」 了承すると、折原はほっとしたように笑った。 折原は決めたことを曲げない。ここで離せと抗議したところで押し問答になるだけだ。 言い訳はいくらでもできる。 でも、それも全部、後付の理屈なのかもしれないと思う。 俺は結局、折原の言葉を断ることが出来ないままなのだと、痛感してしまった。
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