夢の続きの話をしよう《2》

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何年ぶりになるのか分からない後輩と、狭い車内で二人きり。 気づまりだろうなとの懸念は、いざ乗ってしまえば、折原の持ち前の愛想の良さで回避されてしまった。 返答に困らない適当な話題を提供してくれる折原のおかげで、嫌な沈黙が落ちることもなければ、妙な緊張感が生じることもない。 変わらないな、と懐かしくなるのと同じくして、昔から折原の傍は居心地が良かったことを思い出してしまった。 アルバイト先は個人塾だと口を滑らせた瞬間、「先輩が先生っすか」と笑った折原だったが、「あぁでも先輩、面倒見良いですもんね。合ってそう」と一人で納得して、また小さな笑みを零していた。 「別に面倒見、良くはねぇよ、俺は」 「そうですか? 俺、先輩にはお世話になったなぁって本当に思ってますけど」 「俺にそんなこと言うのはおまえくらいだって。大体面倒見良いのは富原だっただろ」 「まぁ富原さんは富原さんで。先輩はまた富原さんとは違う角度って言うか……。なんか難しいですね、説明するの」 そりゃ、思い当たることがないってことじゃないのか、と。突っ込みそうになったが、それはいくらなんでも自虐がきついように思えて、口を噤む。 そのまま窓の外へと視線を転じさせる。あと五分もかからないうちに目的地に到着するのが道なりでわかってほっとした。
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