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その話を一度漏らしたてしまったとき、富原がやたら嬉しそうだったから、深山の集まりの中で、話題に出していてもおかしくはない。
「いや、味方の顔面にぶち当てて、そいつその日、駄目になったから」
一年生だった時の話だ。出るつもりは一切なかったのだけれど、お義理で試合の観戦に庄司達と足を向けた日のことだった。
着いて早々、ドタキャンが相次いで、試合に出る人数が足りなくなったからと拝み倒されて、いきなりコートに放り込まれた。
変な感覚だった。あのころしていたサッカーとは、コートの広さも、中でプレイしている選手の能力も違う。
それなのに。足元にボールが飛んできた瞬間、世界が過去に戻った気がした。
「うっわ、痛かったでしょうね、そりゃ。佐野先輩のボール、サッカーやってない奴からしたら飛んでくる凶器っすよ」
でも勿体ないな。良い球だったんだろうにと、見てもいない癖に折原が笑った。
俺だったら絶対決めるのに、と。そう付け加えたのを、おまえだったらそりゃどんな球でも決めてるんだろよと思った。それは単純に、事実だ。
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