夢の続きの話をしよう《2》

10/21

6627人が本棚に入れています
本棚に追加
/787ページ
その話を一度漏らしたてしまったとき、富原がやたら嬉しそうだったから、深山の集まりの中で、話題に出していてもおかしくはない。 「いや、味方の顔面にぶち当てて、そいつその日、駄目になったから」 一年生だった時の話だ。出るつもりは一切なかったのだけれど、お義理で試合の観戦に庄司達と足を向けた日のことだった。 着いて早々、ドタキャンが相次いで、試合に出る人数が足りなくなったからと拝み倒されて、いきなりコートに放り込まれた。 変な感覚だった。あのころしていたサッカーとは、コートの広さも、中でプレイしている選手の能力も違う。 それなのに。足元にボールが飛んできた瞬間、世界が過去に戻った気がした。 「うっわ、痛かったでしょうね、そりゃ。佐野先輩のボール、サッカーやってない奴からしたら飛んでくる凶器っすよ」 でも勿体ないな。良い球だったんだろうにと、見てもいない癖に折原が笑った。 俺だったら絶対決めるのに、と。そう付け加えたのを、おまえだったらそりゃどんな球でも決めてるんだろよと思った。それは単純に、事実だ。
/787ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6627人が本棚に入れています
本棚に追加