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「もうねぇよ、無理。あんな長い時間、走れねぇし、おまえとは違うんだって」
だからなにも期待するなと言外に匂わした。こいつはそれだって理解していたはずだ。
このあたりでいいから適当に降ろしてと頼んで、そっと目を伏せた。
なんで今更、そんなことを言うんだよ、おまえは。
この三年、一切何の連絡も取っていなかっただろうが。それでお互い、なんの不都合もなかったはずなのに。
懐かしさと言うその一点で、掻きまわそうと思うのなら、止めて欲しい。
俺は、望んでいない。なにも、望んではいない。
ウインカーが光って、路肩に停車する。そのまますぐ降りてしまうつもりだったのに、「先輩」と呼びかけられた声を、無視することができなかった。
諦めて視線を転じさせると、ハンドルに肘をついて伏せていた折原と視線が絡んだ。
「あのころの俺と先輩を繋いでたものって、先輩にしたらサッカーがほとんどだったでしょ?」
違った? と、どことなく困った風な顔で折原が笑う。
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