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「そりゃ、そうだろ。してなかったら、そもそもおまえのことなんて知らなかっただろうし、生活の9割がサッカーだっただろ、あのころは」
朝から夜までサッカー漬けの学生生活だった。サッカー部専用の寮にいたことも相まって、本当に年中同じメンバーでつるんでいたように思う。サッカーを通してできた関わりで、全てだった。
「そうかもしれないっすけど、少なくとも俺はそれだけじゃなかったんですよ」
切ないような目で折原が見ているのは、あのころの記憶なんだろうか。
なんだかなと思いながら、ゆるく頭を振る。
「俺はそんなほかのこと考えてる余裕なんてなかったけどな」
「そう言うんじゃなくて……っつか嫌だな、先輩、絶対分かってるくせに、そうやって、いつもはぐらかすんだもん」
あぁもうだからさ、と。折原がもう一度、先輩と強く俺を呼んだ。逃げるなとでも乞うように。
「あのときも、先輩は俺になにも言わせてくれなかったけど。……俺も言えなかったけど、でも、今くらい、かわいい後輩の話、最後まで聞いてくれてもいいじゃないですか」
茶化す色を残しながらも、折原はひどく真剣な瞳で俺を見ていた。反らせないのはいったい何の引力なんだろう。
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