夢の続きの話をしよう《2》

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ぼそぼそと抑揚のない声で授業を進める老教授の講義は、チャイムと同時に打ち切られる。 たとえそれが、説明の途中だったとしても、「では今日はこれまで」とさっさと鞄にまとめてしまう。そのマイペースなスタイルが俺は嫌いではなかったけれど、出席している生徒の半数近くが睡魔に負けているのも事実だった。 それでも大講義室の三分の二が学生で埋まっているのは、ひとえにこの試験が、テキスト持込み不可で、講義中に教授が喋っただけでプリントなどにも載っていない内容が堂々と出題されるからである。 しかも必修な上に、情け容赦なく単位を落としてくるから性質が悪い。 本日もチャイムと同時に正確に教授が講壇を降りる。途端、ざわめきだす教室で、そっと息を吐く。集中していないと、碌でもないことばかり考えてしまいそうに思えたせいで、やたらと肩に力が入ってしまった。 チャイムが鳴っているのにも気づかず、突っ伏したままの庄司を起こそうかどうしようか迷っていると、出入り口から人波に逆らって入ってくる人影が目に付いた。 栞と、万智ちゃんだ。 目的の先は俺たちだったようで、こちらに気が付いたらしい栞が満面の笑みで駆け寄ってきた。
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