夢の続きの話をしよう《2》

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「佐野ー、んっ!」 ご機嫌な顔で栞が手を目前に突き出してきた。その行動に嫌な予感しかしなくて、思わず万智ちゃんを窺ってしまった。けれど真知ちゃんはと言えば、「無理、無理」とでも言いたげな愛想笑いを浮かべるだけで。 そういや、この間も栞の勢いに押し負けて、折原に会いに行く羽目になったんだったな。 「んってなんだよ、んって」 「佐野こそ、なんでもっと早く言ってくんないかなー、貰ったんでしょ、日曜の試合のチケット!」 満面の笑みの理由が分かったのと同時に、何とも言えない脱力感に襲われた。なんで栞が知ってるんだ。 ……そんなの、一つしかねぇじゃねぇか。 「なんで」 「なんでって一緒に行こうよ、あたしと万智と庄司と佐野で。あ、それとも、もう他の誰かと行く予定とかたてちゃってた?」 「や、そうじゃないけど。……つか、俺二枚しか持ってねぇけど」 だからそのチケットやるから庄司と二人で行ってこい。続けようとした台詞は、ふっふふーと芝居がかった栞の笑い声で立ち消えた。 そして「じゃじゃーん」とご機嫌な効果音とともに栞が鞄から取り出したのは、件のチケットだった。それも二枚。
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