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「なんでおまえ、それ持ってんの?」
返ってくるだろう答えはたぶんひとつだと分かってはいたのだけれど。
「昨日練習見に行ったときに折原くんがこっそりくれたんだー! いいでしょ、すごいっしょ!」
「ならもう栞、それでこいつとデートしてきたらいいじゃん」
万智ちゃんには悪いけど。だしに使うべく、未だ眠りの世界から帰ってこない庄司の茶色い頭を揺らす。
だが一向に庄司は目覚めてくれなかった。俺の労力をあざ笑うかのごとく、栞が笑う。
「だめだよー、あたし万智とも行きたいねって言ってたんだし。それに折原くんに先輩連れてきてねって、これ貰ったんだもん」
「俺が行っても行かんでもあいつに分かる訳ねぇだろ。俺のチケットもやるから三人で行ってこいって。それでいいだろ」
投げやりに提案して、鞄に入れたままになっていたチケットを掴み取る。受け取ってくれることを期待して、万智ちゃんに手渡そうとしたのだけれど。万智ちゃんに笑顔のまま首を振られてしまった。
捨てるのは、さすがにできなかった。だから、ここで処理できるなら、大歓迎だったのに。
その算段が顔に出ていたのか、栞が不思議そうに首を傾げた。
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