夢の続きの話をしよう《2》

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「なんでそんな見に行くの嫌なの、佐野。あ、今更用事あるって言っても信じないからね、あたし」 万智ちゃんも口には出さないだけで、同じことを考えているんだろう。俺の返答を待っていることは明白だった。 だから別に、そんな御大層な理由も言えるような話もないんだって。 逡巡したものの、俺が口にできたのは「いろいろ複雑なの、俺も」と言う曖昧な台詞だけだった。 あとは好き勝手に解釈してくれればいい。そう思っていたのだけれど。 万智ちゃんと顔を見合わせた栞が、「あのさぁ」と言い淀んで自身の顎に指先を押し当てていた。考え込んでいるときの栞の癖だ。 「折原くんもさ、渡したはいいけど、たぶん先輩来てくれないからって言ってたんだよね。佐野は一人でなんでも決めちゃうし、後ろ向きな決断ばっかりするからって」 あんた案外根暗だよねとずばっと切り捨てた栞に、苦笑いすることしか出来ない。 「だからあたしに連れてきてほしかったんじゃないかなぁ。一人だと佐野は後ろ向きだけどさ、周りに押されて流されてでも動けたら、また別の眼で考えられるでしょ? あんた押しに弱いし」 「あたしはよく分からないけど。でも、せっかくなんだし行こうよ、みんなで」
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