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癒し系の笑顔で言い添えられた万智ちゃんのそれは、間違いなく駄目押しだった。
俺の溜息を了承だと取ったらしい二人が、日曜楽しみだねとはしゃいでいるのを横目に、俺は微動だにしない庄司の頭を憮然と観察する。実はこいつ起きてるんじゃねぇのか。
……まぁでも、たとえ起きてたとしてもこの二人の決定には対抗できなかったとは思うのだけれど。
「よし、じゃあご飯いこ!」と、栞が庄司に飛びかかると、さすがに唸り声が聞えてきた。
結構な勢いだったから、本当に寝ていたのだったら、なかなかの衝撃だったと思われる。ざまぁみろと八つ当たり気味に憂さを晴らしながら、片付けに取り掛かる。
庄司に飛びついていた栞が、ふっと嬉しそうに口元をゆるませた。
「折原くんさ、しっかり佐野のこと見てたんだね。佐野のことよく分かってる。大事にされてんじゃん。あんたももっと折原くんのこと大事にしてやったらいいのに」
瞬間、ルーズリーフの束をしまおうとしていた手の動きが止まった。そのことに気が付かれないように、自然を装いながら、曖昧に笑う。
してるっつうの、大事に。だから会いたくないんだよ、俺は。
――そんなこと、誰にも言えるはずがないと思いながら。
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