昔見た夢の話

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「先輩」 折原の手がそっと肩に伸びてきた。大きな手。まだ身長伸びんじゃねぇのかなんて、わざとどうでもいいことを考えた。 「先輩」 「なんだよ、俺、もう迎え来るんだけど」 「キスしていいですか」 駄目だと思った。見てしまった折原の瞳はどこまでも真剣で、あぁおまえは本当に馬鹿じゃないのかと、そう念じた。 「最後に、しますから」 「だめ」 「なんで、ですか」 「なんでも」 「……最後にできなくなるからですか」 その言いぐさが不安そうなくせに、なぜか自信満々で、ああ折原だなと思った。 折原だ。 「駄目なもんは、駄目なんだって」 それでもいつか、こんな記憶を忘れて、俺はテレビ画面の中で折原を見る日が来るのだろうと夢想する。 青い日本代表のユニフォームを身にまとって躍動する折原を想像するのは簡単すぎた。 こいつにはそれが当たり前の未来なんだろう。 そんな未来に、俺はいらない。 折原が決断しない代わりに、俺が決めても良いと思う。 それくらいには、俺は折原の未来が大事だったし、必要だった。
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