夢の続きの話をしよう《3》

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ゴール裏じゃないから、座ってても大丈夫そうだねと青いユニフォーム姿の栞が笑う。 「でも絶対、栞は始まった瞬間、立ち上がると思うな」 同じように日本代表のユニフォームを身に付けた万智ちゃんが首を傾げた。俺もそれには同意する。 栞は感情移入が激しいタイプだ。場の乗り方が巧いとも言えるけれど。 「っつか、物の見事にみんなユニ着てんな。タオルマフラーくらい買っとくべきだった? 俺ら」 苦笑気味の庄司に、栞が大きく肯定する。 「佐野も庄司もやる気なさすぎだと思います。っていうか、マフラーくらい持ってないの?」 観客席をぐるりと見回しても、目に映るのは青ばかりだ。 「見に行く予定なかったもん。持ってねぇ」 「佐野は見に行く予定がたとえあったとしても、買わなさそう」 「だな」 ざわざわと開演前の興奮に空気が揺れている。振られた話に、そうかもなとだけ返事をして、遥か下方のフィールドに視線を落とした。 光に照らされた明るい芝は、俺たちが学生の頃、駆けずり回っていたものとは、当然だが全然違うのだろう。
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