夢の続きの話をしよう《3》

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「あ、佐野。佐野。スタメン発表出てる」 スマホの画面を叩いて栞が残念そうに唇を尖らせた。 「折原くん、ベンチからだ」 「そういや、この間もスーパーサブ的な出方してたねぇ」 万智ちゃんの言葉に、1ヶ月ほど前。このメンバーで街角で見たスクリーンを思い出した。 折しも折原のA代表のデビュー戦だった。その初出場の試合で決めた逆転弾。 ずっとずっと、見ないようにしていたのに、気が付いたときには立ち止まってしまっていた。 「どうだろ、後半くらいから出てきてくれるかなぁ、ねぇ佐野」 「流れによるだろ」 「そりゃそうかもしんないけどさー、佐野、冷たいー」 スマホのリロードボタンを押しながら不貞腐れて見せる栞に、何回押してもスタメンは変わらねぇだろと庄司がからかっている。 そのやりとりをなんとはなしに見ていると、ふと視界にあるものがとまった。 「それ……」 漏れた声に、栞は嬉しそうにユニフォームの裾を引っ張る。 濃い青い色地だから気がついていなかった。裾に黒インクで書かれていたものは見覚えのあるもので。
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