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「あ、佐野。佐野。スタメン発表出てる」
スマホの画面を叩いて栞が残念そうに唇を尖らせた。
「折原くん、ベンチからだ」
「そういや、この間もスーパーサブ的な出方してたねぇ」
万智ちゃんの言葉に、1ヶ月ほど前。このメンバーで街角で見たスクリーンを思い出した。
折しも折原のA代表のデビュー戦だった。その初出場の試合で決めた逆転弾。
ずっとずっと、見ないようにしていたのに、気が付いたときには立ち止まってしまっていた。
「どうだろ、後半くらいから出てきてくれるかなぁ、ねぇ佐野」
「流れによるだろ」
「そりゃそうかもしんないけどさー、佐野、冷たいー」
スマホのリロードボタンを押しながら不貞腐れて見せる栞に、何回押してもスタメンは変わらねぇだろと庄司がからかっている。
そのやりとりをなんとはなしに見ていると、ふと視界にあるものがとまった。
「それ……」
漏れた声に、栞は嬉しそうにユニフォームの裾を引っ張る。
濃い青い色地だから気がついていなかった。裾に黒インクで書かれていたものは見覚えのあるもので。
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