夢の続きの話をしよう《3》

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「いいでしょ、これ。折原くんにこの間練習見に行ったとき、サインしてもらったんだ」 「え、あたしそれ聞いてなかった! どれどれ?」 「言ってなかったけ。実は今日代表戦観戦できると思ってテンションあがっちゃってさ、せっかくだと思って折原くんの番号の買っちゃったんだよねー」 「あーそれで、栞、いつのまに新しいユニ買ったんだろって思ってたんだ。……へぇ折原くんのサインかわいいねぇ、ハートついてる」 「そうそう、かわいいよね。でもなんでなんだろね、なんかこんなの書かれたら、もしかしてあたしに気ぃある!? みたいな誤解しちゃいそうだよね、女子は」 楽しそうに交わされる二人の話に割り込むつもりなんてなかったのに、勝手に声が滑り落ちていて。 きょとんと眼を瞬かせた栞と万智ちゃんに、俺は繰り返した。 「藍だろ、あいつの名前。恋愛とかの愛とは漢字違うけど」 「愛と藍をかけてるってこと? ハートに?」 名前だからか、どっちにしてもかわいいね、それ。 納得したらしい両名に、「ある意味正解だけれどある意味違う」そう訂正しようかとも思ったけれど、長くなりそうだったので、割愛した。 誤解のままでおいておくのは、少し折原に可哀そうな気もしたけれど。
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