6767人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだかんだ言ってよく知ってんね、おまえ。雑誌チェックしたりしてんの?」
手持無沙汰だったらしい庄司に話しかけられて、「してねぇよ」と小さく笑った。
むしろ折原がどこに載ってるか分からなくて、それを見たくなくて。サッカー雑誌からもスポーツ紙からも俺は遠ざかってたよ、もうずっと。
わっと盛り上がった観客に釣られるように視線を上げると、スタジアムの電子画面にベンチ入りメンバーの写真が流れ出していた。
一人、一人、移り変わっていくそれは、今の日本のトップクラスの選手ばかりだ。
「――じゃなくて」
「え、なに?」
「あれ、昔、俺らが悪ノリして作ったやつなんだよ。あいつが未だに使ってんのにはビビったけど」
俺たちが中等部の寮を出るときのバカ騒ぎの一つだった。プロになったらサインも書けなきゃ駄目なんだよなぁと、幼い夢の話をしていた。
思い出さないでおこうと決めたつもりなのに、このままならなさが、少しおかしい。
最初のコメントを投稿しよう!