夢の続きの話をしよう《3》

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「なんだかんだ言ってよく知ってんね、おまえ。雑誌チェックしたりしてんの?」 手持無沙汰だったらしい庄司に話しかけられて、「してねぇよ」と小さく笑った。 むしろ折原がどこに載ってるか分からなくて、それを見たくなくて。サッカー雑誌からもスポーツ紙からも俺は遠ざかってたよ、もうずっと。 わっと盛り上がった観客に釣られるように視線を上げると、スタジアムの電子画面にベンチ入りメンバーの写真が流れ出していた。 一人、一人、移り変わっていくそれは、今の日本のトップクラスの選手ばかりだ。 「――じゃなくて」 「え、なに?」 「あれ、昔、俺らが悪ノリして作ったやつなんだよ。あいつが未だに使ってんのにはビビったけど」 俺たちが中等部の寮を出るときのバカ騒ぎの一つだった。プロになったらサインも書けなきゃ駄目なんだよなぁと、幼い夢の話をしていた。 思い出さないでおこうと決めたつもりなのに、このままならなさが、少しおかしい。
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