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スコアレスドローの後半15分、交代の笛が鳴った。
あっと嬉しそうな声をあげた栞に教えられるまでもなく、俺も気がついていた。
折原だ。
流れたアナウンスに、会場内から折原のコールがわき起こる。
フォワードの仕事は点を取ること。それがチームのエースなら尚更だ。こいつならやってくれるんじゃないか。そんな雰囲気を、折原はいつも持っていて。
同じチームでプレーをしていた時、何度も励まされた。そしてもっと折原を輝かせたいと、いつだって俺は何故かそう願っていたような気がする。
パスは繋がるものの、なかなか得点に結びつかない時間が続く。
ずっと避け続けていたのが信じられないくらい、俺はフィールドを駆ける折原から目が離せなくなっていた。
隣で叫んでいる栞の声も、観客席から沸き起こる声援も、今はひどく遠い。
――折原、だ。
ふいに目の奥が熱くなって、誤魔化すようにして一度ゆっくりと瞬いた。それでも見下ろす先にある姿は変わらない。一緒にフィールドに立っていたころの折原じゃない。
日本を代表する選手になった折原がいる。これだけの熱気に包まれて、今そこにある。
それは、ずっと昔、夢想した、いつかの未来だった。
青いユニフォームを着て、いつか世界に羽ばたける。広い世界に続いているその道をただ歩んでくれればいい。
なんにでもなれる。どこへでも行ける。
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