夢の続きの話をしよう《3》

31/36
前へ
/787ページ
次へ
「すごかったねぇ! また決めちゃった! って、あれ……、佐野? ちょ、佐野!」 「え、あ……悪ぃ、なに?」 揺れる観客席で届くように声を張り上げると、栞はきょとんとした顔で俺を指さした。 「なんか、いやにすっきりした顔しちゃって、どうしたの?」 「……え?」 「うん、そりゃそうだよね、ごめん! 変なこと言った! 決まったねぇ、よし残りあと5分! 勝ちきれー!」 抱き着いてきていた腕を外して、栞はまたフィールドに向かって声援を送り出す。その興奮した横顔を見つめながら、俺は「そうだな」と小さく呟いた。 このざわめきの中、誰にも聞こえない本音を。 「すっきり、な」 そうだ。俺は何を血迷っていたんだろう。 俺が知っているのは高校生の頃までの折原で。今ここにいる折原とは全然違うのに。 あの狭い世界の中で、俺に触れてきた子どもじゃない。
/787ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6767人が本棚に入れています
本棚に追加