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「ただ、いつまでも俺があのころに固執してんのも変な話だって、ようやく思っただけ。思った……っつうか思えたっつうか」
「そう、なんだ?」
「うん、そう。だってそもそもおかしいだろ。何年も前にちょっと一緒にプレーしたことがあるってだけで、そのころの面影ばっかり追ってるって」
折原は、あのころの折原じゃない。
今の俺を見てよ、と。折原は言ったけれど、確かにそうだった。中高生だった頃、同じ時間を過ごしていた後輩は、もういない。
だからこれは俺の意識の問題なのだ、本当に。
「いつまでも過去の栄光にしがみついてんのも、みっともねぇし」
自嘲した俺を慰めるつもりだったのか、栞は「そう言うんじゃないと思うけどなぁ」と呟いた。
「まぁ佐野がそう思いたいんだったら、あたしはなんとも言えないけど。でも」
「え、なに? 悪い、聞こえなかった……」
「―――だねって言ったの。余計なお世話だと思うんだけど、ごめんね。お節介で」
話を終わらすように笑った栞が、腕を強く引く。
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